映像や音声などのメディアデータを、専用ケーブルではなく
IPネットワーク上でやり取りする技術群を、
Media over IP(MoIP)と呼びます。
これまでの映像制作現場では、映像信号を送るには「SDIケーブル」、音声には「XLRケーブル」といった具合に、信号の種類ごとに専用の配線が必要でした。MoIPでは、これらの信号をすべて「パケット(データ)」に変換し、一般的なコンピュータネットワーク(イーサネット)と同じインフラで伝送します。
このページでは、MoIPの基本、主な規格の使い分け、そしてそれを支える技術を整理して解説します。
| 項目 | 従来の放送設備(SDI) | MoIP(IPベース) |
|---|---|---|
| 接続方式 | ポイント・ツー・ポイント(1対1) | ネットワーク(多対多) |
| 柔軟性 | 物理的な繋ぎ替えが必要 | ソフトウェア上でルーティング変更可 |
| ケーブル | 信号の種類ごとに専用線が必要 | LAN/光ファイバー1本に集約 |
| 距離 | 数十〜数百メートルが限界 | ネットワークが届く範囲に制約なし |
放送局向けの世界標準規格群
放送局やプロ映像制作の現場で使われる標準規格群です。映像・音声・補助データを個別のストリームとして伝送するため、必要なものだけを受け取る柔軟な設計ができます。
導入しやすいIP映像伝送
比較的低コストで導入でき、既存のギガビットネットワークでも高品質な映像を送れるため、ライブ配信や会議室システムで広く使われています。
音声に特化したIP伝送
音声のIP伝送に特化した規格です。コンサート会場や設備音響の分野で世界的に普及しています。
インターネット経由の安定伝送
公衆インターネット経由で安定して映像を伝送するためのプロトコルです。拠点間の伝送や中継で活用されています。
PTP(時刻同期)
ネットワーク上のすべての機器に、ナノ秒単位の共通の時刻を持たせる技術。バラバラに届くパケットを受信側で正確に組み立て直すための土台です。
マルチキャスト
1つの映像を、ネットワーク側で複製して「必要な機器だけ」に届ける仕組み。送信側は1本送るだけで、多数の機器が同時に受信できます。
ST 2022-7(冗長化)
同じデータを2つの独立した経路で送り、受信側でパケット単位で合成する仕組み。片方の経路に障害が起きても映像が途切れません。
NMOS
機器の発見や、信号をどこへ繋ぐかの制御を担う標準仕様。マルチベンダー環境での運用を支えます。
MoIPの導入は、単なる「ケーブルの置き換え」ではありません。時刻同期の設計、ネットワークスキルの習得、マルチベンダー機器の互換性確認など、映像とITの両方の知識が求められます。
こうした課題に業界全体で向き合うために、Media over IPコンソーシアムがあります。相互接続検証、設計ガイドラインの策定、人材育成セミナーなどを通じて、一社では抱えきれない課題に取り組んでいます。
Media over IPコンソーシアムの概要をまとめたパンフレットをご用意しています。社内での共有・検討資料としてご活用ください。